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高齢者の特徴 – 東洋医学の基礎概念

東洋医学からみた「高齢者の特徴」

文責 有限会社ラサルーテ 石原貴司より

1章 東洋医学の基礎概念

〇 陰陽について

東洋医学ではすべてのものは2元から成り立っていると考えます。例えば「明と暗」「温と冷」「光と影」「収縮と拡散」・・・。すべての事柄は2面性を保っているからこそ、この3次元において存在していられるという考え方です。これを陰陽論といいます。人間の体も陰と陽から成り立っています。また「陰陽」はもって生まれたエネルギーとして考え、これを「先天の気」といいます。これは遺伝的にもって生まれたその方の体質といってもいいでしょう。先天というだけあってこれは生命現象の源です。

「陽」は体温、「陰」は体温が上がり過ぎないように抑制している冷やす力を表しています。体温を維持するという生命現象そのものが「陰陽」です。「陽」の性質は、熱・上がる・循環性などです。「陰」の性質は、水、冷やす、下がるなどです。人体にある陰気は下に在り上に向かって循環します。陽気は上に在って下に向か って循環します。この循環があってはじめて正常な体温を保つという生命維持現象が行われています。この循環は自律神経が行っています。

昔から健康の指標として「頭寒足熱」といいますが、これは下に在る陰気が正常に上に上がって熱しやすい頭を冷やし、上にある陽気が下に下りて冷えやすい足を温めているという正常な陰陽循環が起こっている姿を表す言葉です。言い換えればそれを行っている自律神経が正常に機能しているという状態を表しています。

現代人に多い「冷えのぼせ」はこの逆で病気の代表的な状態です。頭に陽気ばかりで熱を持ち、足に陰気ばかりで冷えているという、自律神経失調状態の表れです。つまり現代病のほとんどの原因といわれているストレス、自律神経失調は「冷えのぼせ」の状態になっていると考えられ、この異常な状態を「頭寒足熱」の状態に戻せば改善できるということです。

冷やす作用の陰気は腎臓が、温める作用の陽気は心臓が担っているといわれています。人の生命の終わりはほとんどが腎不全か心不全です。これが「先天の気」が枯れた状態です。もうひとつ重要な概念は「陽気=心臓=血液」「陰気=腎臓=水」ということで、陽気は血液の循環が、陰気は体内の水の循環が担っているということです。高齢者は陰気が不足しやすい=水分が不足し易く、体が熱を持ちやすくなりさまざまな組織が水分減少を起こして乾く傾向になります。

また陰気が減少すると冷えのぼせになり、特に上半身に熱を持ちやすく、鼻腔や口腔の 粘膜が乾燥してウイルス性疾患やカゼをひきやすくなったり、頭がボーっとして認識力が 低下したり、頭痛やめまいの原因にもなります。
更年期障害や自律神経失調のほとんどが この状態から引き起こされています。
東洋医学的に診ると認知症の多くにもこの「冷えのぼせ」が見られます。

頭寒足熱と冷えのぼせ、大阪訪問マッサージウェルネスより

〇 冷えのぼせの原因

  1. 1.冷えのぼせは陰陽の循環不全から起こります。陰気と陽気は身体の中央部で交わります。
    人体の中央部は「胃」です。ここにつまりがあると陰気と陽気は循環しません。
    医学的にも冷え症の多の症例に胃下垂や胃の変形があることが確認されています。
    食べ過ぎ、飲み過ぎは胃や横隔膜に毒が溜まり気の運行を妨げるというのが東洋医学の考え方です。
    また冷飲過多や慢性便秘も気の運行を妨げます。
    特に高齢者の場合、消化機能が弱っている方が多いので陰気と陽気が循環せず冷えのぼせを起こしやすくなります。
  2. 2.糖分の摂取過多やアルコール、ドリンク剤や一部の栄養剤は体内の熱量が多くなりすぎて陽気が上に上がるためのぼせの原因になります。
    また脈が速くなって心臓に負担がかかったり、炎症を起こしやすくなりますので控えるように指導してください。
    最近では糖尿病の方のアルツハイマー発症率が正常の方に比べ5倍もあることが明らかになりました。
    特に糖分は体に害がないとの思いから過剰摂取が見られますので注意してください。
  3. 3.東洋医学では陰気は夜に養われるといいます。
    実際に睡眠は自律神経のクールダウンの時間で、昼間活性化していた交感神経が副交感神経優位に切り替わり体を休め体温を下げるように働きます。
    夜間睡眠ができないと神経が高ぶり自律神経の均衡が保てなくなり冷えのぼせを起こします。

〇 冷えのぼせと認知症

冷えのぼせは下肢に行く血流量が減少して上半身や頭部へ血流が集中します。その結果、頭部は熱をもって認識力が低下しやすくなります。また上記でも触れましたが、血液中に糖分などの栄養素が多すぎると血液が粘って血行が悪くなり、細胞を養えなくなります。また逆に過剰の栄養素が細胞に流れ込んだ場合でも細胞が炎症を起こして壊死するという研究発表もされていたようです。いずれにせよ、東洋医学では頭部が熱を持つというのは非常に重篤な状態と考えます。特に高齢者の場合には、冷やす力が弱るということですから十分な注意と処置が必要です。この対処法は後に「高齢者の健康維持法」としてまとめます。

〇 先天と後天

陰陽は「先天の気」だと書きました。このもって生まれたエネルギーの陰陽を養っているのが「後天の気」と言われる食事です。この食事を消化・吸収させる胃腸機能が「後天の気」を司る重要な器官として重要視します。

高齢者は持って生まれたエネルギー=先天の陰陽が不足してきますので、これを少しでも 補うために食事が非常に重要な要素となります。東洋医学ではこの食事を少しでも吸収し やすくなるように胃腸に関係する気の流れを整えます。
この方法は最終の項に記載することにしましょう。

また高齢者のさまざまな症状は、治療効果が表われにくいもので、改善にも時間がかかります。その結果、治療者やサービス提供側としては今行われている治療やサービスが本当に効果あるものか、もっと早く良くなる方法はないかなど暗中模索に陥りやすいものです。

東洋医学ではとにかく「後天の気」つまり胃腸機能を高めることは高齢者にとって絶対的な治療として考え、治療効果はすぐにはあらわれないものの、生命の土台を維持する治療法として自信を持って継続的に行います。昔は高齢者の方は「長生きの炎」といって、「三里(サンリ)」という胃の代表的なツボにお灸をしておられました。これも「後天の気」を高めて病を予防しようという東洋医学の知恵ですね。

また胃の気の流れ(経絡という)は、足から始まって頭、特に前頭部につながっています。脳の前頭葉は人格や意識の場です。つまり胃がおかしくなると意識にも障害が起こりやすいということです。ちょっと難しいのですが、東洋医学の聖典ともいえる2000年以上前にかかれた書物に面白い記載があるので意訳して掲載しておきます。

 

胃経が病んだときの病症

悪寒。よく呻く。よくあくびする。額が黒くなる。ひどくなると人に会うのを嫌い、木をたたく音を恐れる。落ち着かない。部屋に閉じこもりたがる。あるいは外に出て走り回ったり高いところに登って歌ったり、裸になったりする。腹が張る。腸が鳴る。のどが腫れる。唇が乾く。声が出なくなる。膝関節が腫れる。あるいは足に力がなくなる。

『霊枢、経脈篇』

精神症状の記載が多くみられます。興奮型の認知症はこのタイプが多く、私の臨床経験でも糖分摂取を控えていただいて、認知症の興奮が収まったケースがありました。余談ですが、近年問題になっている子供のインフルエンザ脳炎は東洋医学では「カゼが胃を犯した→前頭葉に異常→精神症状発症」と考えます。うわごとを言ったり、高いところから飛び降りたりなどは全く記載のとおりです。普段から食べ過ぎたり甘い物を摂りすぎたりしている子供に多いようです。

胃の機能が低下すると高齢者では膝が腫れる、足が萎えるという症状が多くなります。糖分摂取は控えめにするように指導してください。

前項に高齢者は陰気が不足しやすいと書きました。陰気という水分も消化吸収して補うことから「後天の気」と考えます。
高齢者は水分が不足して体を冷やす作用が弱くなるため肺炎などの熱疾患や炎症症状に対して非常に弱くなります。また微熱が続いたりしやすいものです。これを予防するために小腸の気の流れを良くします。飲んだ水分の70~80%は小腸から吸収します。このため小腸の機能を高め水分の吸収を少しでも増加させるためです。高齢者は水分を多く摂るようにといわれますが、それだけでは頻尿や体の冷えを起こし逆に体調を崩しやすくなりますので、吸収機能を高めてあげることが重要です。

この小腸の機能の高め方も最後の項で説明します。

2章 高齢者の体の特徴

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